アスペルガーの夫と別れたい

夫が妻の気持ちを分かってくれない、話が噛み合わない、妻が辛いときに気に掛ける様子がなく、いつもと同じ行動をとっているということがあれば夫はアスペルガー症候群(広範性発達障害/自閉症スペクトラム障害)かもしれません。

1アスペルガー症候群(広範性発達障害/自閉症スペクトラム障害)とは

先天的な脳の機能的障害でその特徴から人とのスムーズな関係を構築、維持することに困難を生じることがあります。

2特徴

(1)人との関係構築が困難

具体的には、

  • その場の空気が読めない
  • 相手の気持ちが想像できない。
  • 相手の立場や気持ちに配慮した言動が取れない
  • 人との適度な距離感が取れない。
  • 言葉を言葉通りに受け取る。

といった特徴から人と円滑なコミュニケーションをとることが困難で、人との良好な関係を築くことが難しいとく特徴があります。

(2)独特のこだわり、興味の偏り

例えば、

  • 決まったやり方や習慣にこだわる
  • 関心や興味が極端に狭い

このこだわりが実現できないと、不機嫌になったり、最悪暴力を振るうこともあります。
知的障害は伴わず、むしろ、知的能力は高いことが多く、専門職等高度な仕事に就いている人も多いです。

3改善の余地は?

アスペルガーの場合、本人には全く悪意がない、例えば、妻の気持ちを分かろうとしても分からない、こういう発言したら相手がどう思うかが分からないことが殆どです。そのため、夫が、自分がアスペルガーであること、少なくとも、人の気持ちが想像できず適切な言動が出来ない特性を有していることを自覚し、学習する意欲があれば、改善できる可能性はあります。

4モラルハラスメントとの違い

モラルハラスメントの原因は、自己愛性人格障害であることが多いです。自己愛性人格障害は、アスペルガー症候群が先天的な脳機能障害であるのと異なり、生育環境などから後天的に形成された人格であると言われています。自己愛性人格障害者の言動の根底にあるのは、常に自分が優位に立ちたい、承認欲求です。

アスペルガーの夫が自覚なく妻の気持ちを傷つける言動をするのに対し、自己愛性人格障害の場合は、敢えて妻が傷つくようなこと言って自信を無くさせる、自己嫌悪に陥らせ、支配しようとします。

アスペルガーと自己愛性人格障害が併存する場合もありますが、アスペルガーだけの場合は、本人の自覚によっては改善の余地があるのかなと思います。

5アスペルガーを理由に離婚できるか。

夫が離婚に同意する場合は理由は問わず、離婚が可能です。

しかし、夫が離婚に同意しない場合は、裁判所に離婚の可否を決めてもらいますが、その場合、民法770条1項で定められている離婚事由が必要になります。

民法770条1項
1号不貞行為
2号悪意の遺棄
3号3年以上生死不明
4号強度の精神病
5号婚姻を継続し難い重大な事由

民法770条1項4号「強度の精神病」は、「夫婦の相互協力義務を果たすことが出来ない程度の精神病」で一定の継続的治療をしても協力義務を果たせる程度まで回復する見込みがないこと、また、離婚を求める側は、精神病の配偶者の離婚後の生活についての何らかの具体的方策を講じなければならないとされており、アスペルガーがこれに該当するとはいえません。

アスペルガー自体が770条1項の離婚事由に該当すると言うことは難しいですが、例えば、アスペルガーの夫がその言動について、全く顧みることなく、妻から指摘されても、自分の言動を改善しようとする意欲が見られない場合は、その言動の程度によっては、770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、離婚が認められる可能性はあります。

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この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

2000年10月 弁護士登録(第一東京弁護士会所属:53期)。
弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、年間100件以上の相談を受けてきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。
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