お金の問題の相談

離婚ケースでは、お金も問題は、離婚後の生活を左右する重要な問題です。
ここでは、以下について、ご説明します。

1 慰謝料

(1)何についての慰謝料か。

離婚の慰謝料には、

  1. 離婚の理由となった個々の不法行為(不貞、暴力など)についての慰謝料
  2. 離婚に至ったことについての慰謝料(離婚慰謝料

の2つがあります。

①の場合は、個々の不法行為について、不法行為、故意過失、因果関係、損害を主張する側が証明しなければなりません。

②の場合は、離婚ケースを全体的にみて、離婚に至った原因は、夫婦のどちらにあるか、どちらにも責任はあるにしても、どちらの方がより大きいかで判断されます。

実務の殆どは、②を主張します。これは、①だと、個々の不法行為の立証、特に損害の立証が困難であることがあることが多いからというのが理由として挙げられます。

(2)消滅時効

離婚慰謝料の消滅時効は、離婚から3年です。

個々の不法行為慰謝料の消滅時効は、不法行為と損害を知ってから3年不法行為から20年です。生命身体の侵害についての慰謝料は知ってから5年です。

ただし、夫婦間の不法行為については、離婚から6か月を経過するまでは時効消滅しません。

(3)慰謝料の額

慰謝料は、婚姻期間、当事者の年齢、不法行為の有無、程度、経済力等諸般の事情を考慮して判断されます。

もっとも、慰謝料をいくらにするかについては、明確は基準はありません。

事案によって異なりますが、裁判所が決める場合の相場は、殆どのケースが100万円から300万円の範囲で認められているようです。

(4)慰謝料請求方法

離婚の慰謝料請求は、離婚と一緒に請求することが出来ます。

調停では、調停申立書に離婚の請求と共に慰謝料請求についてもするか否か記入する欄があります。

また、最初は慰謝料を請求するつもりはなかったので、離婚請求だけをしていたが、後から、慰謝料請求も追加して請求するということも可能です。

訴訟においても、提訴時に離婚請求と同時に慰謝料請求を記載して請求することが可能です。なお、訴訟で慰謝料請求する場合は、請求する慰謝料額に応じて裁判所に提出する印紙代が決まってきます。

(5)協議や調停の実情

協議や調停の話し合いで、慰謝料について合意できるか、合意できるとしてもいくらかについては、ケースによってかなり異なります。

例えば、離婚を求める夫が、妻に早期に離婚に応じてもらうために、裁判所が決める相場よりも高い額で慰謝料を支払ったり、夫に特に慰謝料を支払う理由がなくても、早期離婚のために慰謝料を支払う場合があります。

離婚の原因が夫にあることが明らかな場合(不貞など)は「慰謝料」という言葉を使うことが多く、離婚の原因がどちらにあるか明確でない場合、または明確にしたくない場合は「解決金」とすることが多いです。

離婚を求める妻が、お金よりも離婚を優先して、夫に慰謝料を支払う理由があるにもかかわらず、夫に慰謝料を求めず早期に離婚をしようとする場合もあります。

ある程度の財産分与が見込まれる場合に、財産分与に慰謝料を含めて、数字を丸くして解決するという場合もあります。

2 財産分与

(1)財産分与とは

財産分与は、離婚時に、婚姻中に取得した財産、つまり、夫婦共有財産を分ける手続きです。
離婚後に経済的に不安のない生活を送ることが出来るかは、離婚時に婚姻中の財産をきちんと分けることが出来たか否かにかかっています。

(2)財産分与の対象

財産分与の対象になるのは、婚姻中に夫婦のいずれかの収入で築いた財産は、基本的に全て財産分与の対象になります。

名義は関係ありませんので、例えば、不動産の名義が夫のみになっているとか、貯金の名義が夫であっても、それらは妻にも権利がある、実質的に共有であるとされています。

財産分与の対象となる典型的な財産としては以下が挙げられます。

  • 不動産
  • 預貯金
  • 株式、債券等有価証券
  • 保険(解約返戻金があるもの)
  • 自動車
  • 現金
  • 退職金
  • 企業年金
  • 個人型確定拠出年金
  • 企業型確定拠出年金

などですが、これが全てではありません。婚姻中に取得したと考えられる財産は全て細かく洗い出してしてください。

財産分与の証拠集めについては、こちらも御覧ください。

(3)分与割合

財産分与の分与割合は、夫婦共働きであっても、夫婦間で賃金格差があっても、夫婦のいずれかが専業で家事育児をしていようと、基本的には、50:50の割合で分けます。

もっとも、夫婦の一方の特殊な才能や専門性(芸術家や医師、弁護士、経営者等)で多額の財産が形成されている場合は、分与割合が50:50としない審判例もあります。また、夫婦同等の収入のある共働きであるのに専ら妻だけが家事にも従事していたケースで、夫婦の分与割合を4(夫):6(妻)とした審判例もあります。

(4)財産分与の手順

①婚姻中のそれぞれの名義の財産を開示

離婚に先立って別居している場合は、別居時、離婚まで同居をしていた場合は、離婚の少し前に存在する財産の情報を開示し合います。

同居中に夫名義の財産資料を集めることができれば良いのですが、必ずしも全て集めることが出来ない場合があります。その場合は、離婚協議や離婚調停が始まってから、夫に「ここに預金があるはずだ」などと指摘して、資料の開示を求めることになります。

夫が任意で情報開示をしない場合は、裁判所を通じて、調査嘱託などの手続きで直接金融機関等から開示を求めることになります。

②婚姻中の財産確定

婚姻中に取得した財産でも、例えば、一方が自分の親からの援助や相続財産で取得した財産である場合(これを「特有財産」といいます)があります。そのような財産は、財産分与の対象ではありませんので、分与する財産から除外することになります。

この点は、「特有財産」を主張するためには、主張する側が、その財産が特有財産であることを証明しなければなりません。

もし、この特有財産であることの証明が出来ない場合は、夫婦の共有財産として、財産分与の対象になります。

③財産の評価

不動産や証券のように、夫婦の貢献とは関係なく価額が変わるものについては、離婚時の価額を基準にするとされています。

もっとも、実際の協議や調停では、離婚時や離婚直前の価額を厳密に把握することは難しいので、離婚までのいずれかの時点の価額で双方で了解したもの、または双方が出してきた価額の平均や中間値をとることが多いです。

④分ける

基本的に、夫婦いずれかの名義の財産を合算して、50:50の割合で分けます。例えば、夫名義の財産の方が妻名義の財産よりも多い場合は、全財産を合算したものを50:50で分け、妻名義相当の金額を控除した金額を夫から妻へ金銭を支払う方法が多いです。

3 養育費

離婚後、子と同居しない親は、子に対して養育費を払わなければなりません。

養育費は、父母双方の収入をベースに裁判所のホームページに掲載されている「算定表」で決められます。養育費についての詳しい説明はこちら(養育費の不払いを防ぎたい)をご覧ください。

4 年金分割

年金分割は、婚姻中に支払った厚生年金保険料について、夫婦が同等に支払ったことになるように再計算して、年金受給額の計算の基礎となる標準報酬・賞与の額を調整することです。

特に婚姻期間が長く、夫婦の賃金の差が大きい場合は、年金分割をするとしないとでは、将来受給する年金額が大きく変わってきます。

忘れないように年金分割しましょう。

年金分割の詳しい内容は、こちらをご覧ください。

なお、企業年金や確定型拠出年金は、年金分割の対象ではないので、離婚の財産分与で分けることになります。

5 離婚後のシングル家庭支援制度

離婚後の片親支援制度が各種あります。

ケースによっては、婚姻を続けるより、離婚して支援制度を利用した方が経済的にプラスになる可能性もあります。自治体によっても異なる部分もありますので、お住まいの自治体で確認してみましょう。

制度の例

  • 児童手当(子が中学卒業まで)
    まだ離婚に至っていない別居状態でも受給できる場合があります。
  • 児童扶養手当
    まだ離婚に至っていない別居状態でも受給できる場合があります。
  • 所得税法の寡婦控除の適用
    税金が軽減される制度
  • JR通勤定期券の割引
  • 都営交通の無料パス
  • バス、地下鉄等の無料乗車券
  • 粗大ゴミ処理手数料無料
  • 指定ゴミ袋交付
  • 上下水道の料金減免制度
  • 放送受信料の減免制度
  • 保育料の減免制度
  • ひとり親対象貸付制度
  • 医療費助成制度
  • 年金保険料免除、納付猶予制度

などなど。

この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

2000年10月 弁護士登録(第一東京弁護士会所属:53期)。
弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、年間100件以上の相談を受けてきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。
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