長期別居後の離婚

長期別居のよくあるケースとしては、2つあります。1つは、夫が不貞などして有責配偶者で長期間別居している場合、もう1つは、特にどちらに原因があるわけではないが、長期間別居をしている場合です。

1 夫が不貞などして有責配偶者の場合

有責配偶者とは、別居等の婚姻破綻の原因が主にある配偶者のことです。典型的な例が、不貞をした夫です。夫が不貞してそれをきっかけに別居が開始された場合、夫が有責配偶者となります。

判例上、有責配偶者からの離婚請求は原則認められず、例外的に長期の別居など一定の要件を満たした場合にのみ認められるとしています。その場合、夫からの離婚請求が認められないので、別居を続け、妻は夫からの婚姻費用(生活費)を受けて生活します。

夫が有責配偶者で長期別居のケースは、ある程度高額な生活費(婚姻費用)の支払いを毎月受けながら別居が続いていることが多いです。

この場合、夫からの離婚請求は、夫が有責配偶者であるため、容易には認められませんが、例えば、子が高校を卒業したとき、子が大学卒業したとき、夫が定年退職するときなど、節目で、夫から離婚請求がくることがあります。

その場合、どのような対応をするのかは、つまり、離婚前提で話し合いを進めるのか、それとも、離婚には応じない態度を貫くのかは、別居経緯、別居期間、別居中の婚姻費用、別居中の双方の言動などいろいろな事情を考慮して、方針を決めることになります。例えば、10年以上別居が続いていると、夫が有責配偶者であっても、裁判所での離婚が認められる可能性が出てきますので、それを念頭において、方針を決めます。

2 特に理由なく長期の別居が続いている場合

どちらかが有責配偶者でない場合、別居の原因はお互い様という場合、3年程度別居が続いている場合、婚姻が破綻しているとして、どちらから離婚請求すれば、裁判所は離婚を認める可能性が高いです。

ですので、特に理由なく3年程度別居が続いたら、いつ夫から離婚請求されても良いように、将来の離婚を見据えて、準備をしておくことをお勧めします。

3 財産分与の基準時について

離婚の財産分与では、いつの時点の財産を基準に判断するかが問題となります。そして、その基準時は原則として「別居時」とされています。それは、財産分与は、夫婦が婚姻中に協力しあって取得した財産を清算するもので、別居時にその協力関係が終了するからです。

長期間別居していた場合も、財産分与の基準時は、「別居時」を基準とします。例えば、別居のきっかけが夫の不貞などの有責行為によるもので、別居中、妻は子の年齢が低いために十分に稼働できず、他方、夫は別居時は財産が無かったが、別居後に多くの財産を形成したという場合でも、財産分与の基準時は別居時とされます。

もっとも、この場合は、財産分与の中で、別居中の婚姻費用の清算や扶養的な財産分与を考慮して、公平になるように最終的な金額が決められることが多いです。

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この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

2000年10月 弁護士登録(第一東京弁護士会所属:53期)。
弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、年間100件以上の相談を受けてきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。
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