専業主婦・パートの離婚

専業主婦や扶養の範囲のパート勤務の方は、別居や離婚後の生活に不安を感じ、自分だけでは経済的な点から子を育てられないのではないかとの心配から、離婚を思いとどまり、長年我慢してきた方が多数いらっしゃいます。

しかしながら、きちんとお金のことを取り決めて離婚し、地方自治体の1人親用の制度を利用するなどすれば、離婚後問題なく生活できる方が殆どです。むしろ、婚姻中の夫婦不仲による精神的負担から解放され、皆さん、離婚後は、離婚前とは別人のように生き生きと生活されています。

お子さんも、両親の不仲を日常的に目にして生活するより、より、精神的にも安定した生活を送られています。

とはいっても、納得、満足できる離婚を実現するには、きちんとした準備が不可欠です。

以下、ご説明します。

1住まい

夫と同居したまま離婚の話をすることも可能ではありますが、普段の生活でも夫と同じ空間にいるのが辛いのに、同居したまま離婚の話をするなんて、精神的負担は著しいと思います。そのため、やはり、離婚の話を進める前に、別居した方が良いです。

ここで、離婚したくなる原因が夫にあるんだから、夫に出て行って欲しいと思いがちですが、夫が自分から出ていくならともかく、夫を無理やり追い出すことは出来ません。

そのため、別居するには、自分が家を出る必要があります。

また、別居の際の引越費用についても、基本的には自分で準備する必要があるので、別居に向けて、ある程度お金を準備する必要もあります。

夫にDVがある場合など、シェルターに入所もできる場合もありますので、自治体の女性相談窓口や福祉事務所に相談するのも良いでしょう。

2別居中の生活費(婚姻費用)

妻は夫に別居中の生活費(婚姻費用)を請求することが出来ます。家庭裁判所がホームページで公開している「算定表」をベースに、夫婦の実情(子が私立学校に行っている場合など)に合わせた取り決めがされています。

この婚姻費用は、原則として、家庭裁判所に調停を申し立てた月からの婚姻費用が決められますので、別居したら、その月の間に申し立てましょう。

夫の収入資料については、別居すると、取得しにくいので、同居中に集めておくと良いです。

婚姻費用は、日々の生活にかかわることですので、調停を申し立てると、裁判所はなるべく早く取り決めしようとします。夫が婚姻費用の支払いや金額に同意しない場合は、最終的には裁判所が決めることになるのですが(審判)、その場合は、申立から決まるまでに少なくとも6か月はかかり、その間の婚姻費用の支払もないという状況もあり得ます。

そのため、別居の際の引越費用と同じく、別居の前に、当面の生活費も準備しておく必要もあります。

3財産分与

財産分与は、婚姻中に夫婦どちらかの収入で取得した財産を離婚時に分ける手続きをいいます。よく「俺の稼いだ金で買ったものは全て俺のもの」とか「家は俺の名前だから俺のもの」と言い張る夫がいますが、そのような主張は認められません。

名義を問わず、基本、50/50で分けることになります。

もっとも、婚姻中の財産を50/50で分ける前提として、どのような財産がどれだけあるのか確定しなければなりません。
この点、例えば、妻が家計管理を全て担っていた場合は、妻が婚姻中の財産を全て把握していることになりますので、婚姻中の財産を確定するのに問題はありません。

しかし、夫が妻に毎月一定の生活費は渡すが、その他は全て夫自身が管理していたという場合があります。その場合は、妻は婚姻中の財産を把握できない場合がありますので、同居中に情報収集する必要があります。

夫が使用していると思われる銀行、証券会社、保険会社など、出来る限り情報収集しましょう。内容まで分かればより良いですが、会社名と支店名だけでも役立ちます。

もし、夫名義の不動産や夫名義の預金があり、別居等したら、夫がそれらを処分していまいそうだという場合は、仮差押または仮処分という手続きで夫が勝手に処分できないようにする方法もあります。

夫の将来の退職金について、まだ、退職が先であっても、財産分与の対象となる場合もありますので忘れずに。

4慰謝料

離婚の原因が明らかに夫にあって、それを示す証拠がある場合、離婚の慰謝料が認められます。

典型的な例は、夫の不倫や暴力です。ただ、慰謝料が認められる場合でも、その金額はあまり高くなく、せいぜい300万円程度で、200万円前後が多いです。

5親権

夫婦に子どもがいる場合は、離婚時に夫婦のどちらかを子の親権者として決めなければいけません。

親権者をどちらにするかについて、夫婦間で合意できない場合は、裁判所が決めることになります。

その際に親権者を決める基準は、子の出生から別居まで夫婦のどちらが主に子の世話等をしてきたかが一番重要な基準でそれに加えて、現在の監護状況や将来も問題なく監護できるか等その他の事情も加味して決められます。

専業主婦やパート勤務の妻の場合、妻が主に子の世話をしていることが殆どなので、離婚の際の親権者決めについて心配する必要はありません。

もっとも、別居する際に子を夫の下において出てしまうと、必ずしも子を取り戻せないこともあります。子どもが生まれてから自分(妻)が主に子の世話をしていた場合、もし、子を置いて出てしまうと、子の監護状態も悪くなり、子にとっても危険です。

自分(妻)がそれまで主に子の世話をしていた場合、子と共に別居し、それまでの監護状態を続けることが大切です。

6養育費

離婚に際して、妻が子の親権者となり、子を監護していくことになる場合、夫は妻に対し子の養育費を支払う必要があります。この養育費も、裁判所が決める場合は、裁判所のホームページで公開されている「算定表」をベースにその他の教育費等の事情も加味して決められます。

7年金分割

年金分割は、夫婦が厚生年金に加入している場合に、婚姻中に支払った年金保険料を夫婦共に支払ったことにする制度です。年金分割をしないと、妻が夫の被扶養者の間、夫だけが年金保険料を支払い、妻は支払わなかったことになってしまいます。

婚姻期間が長く、被扶養者であった期間が長い場合は、年金分割をすることで、将来受給する年金額にかなり差が出てきますので、忘れずに年金分割手続きをしましょう。

平成20年5月以降、夫の被扶養者だった場合、離婚後、夫の同意は必要なく、年金分割手続きが出来ます(「3号分割」)。

平成20年4月以前から婚姻していたり、夫の扶養から抜けていた時期がある場合は、夫婦で合意して年金分割をする必要があります(「合意分割」)。

もっとも、このときに夫が年金分割に合意してくれないとか、50:50の割合に合意してくれない場合は、裁判所の審判で50:50の割合での年金分割をすることが出来ます。

離婚と同時か、離婚後2年以内に年金分割できます。

8ひとり親家庭支援制度

様々なひとり親家庭支援制度があります。

児童扶養手当、医療費助成、住宅手当、児童育成手当、税金寡婦控除もあります。また、電車やバスの割引制度、下水道料金減免、ごみ手数料免除など自治体によっても多種多様な支援制度がありますので、お住まいの自治体に確認してみましょう。

夫との別居、離婚を考えたら、夫に離婚の気持ちを伝えるなどの行動を起こす前に必ず、弁護士にご相談ください。

別れたいと思って、いても立ってもいられず、夫に離婚したいと伝えたら、夫はすぐに離婚に同意し、他に何も決めないまま離婚届だけ提出してしまったという場合があります。

もちろん、離婚届を提出した後でも財産分与や慰謝料などその他の条件を決めることは出来ます。ただ、離婚と同時の方がより良い離婚条件になる場合も多いです。

ですので、まずは、弁護士に相談して方針を立てて進めることをお勧めします。

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この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

2000年10月 弁護士登録(第一東京弁護士会所属:53期)。
弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、年間100件以上の相談を受けてきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。
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