熟年離婚とは?後悔しないために女性が知っておくべきポイント

婚姻から20年以上経過した後の離婚は、一般に「熟年離婚」と呼ばれます。

  • 長年の結婚生活の中で、価値観の違いが大きくなった
  • 会話がなくなった
  • 一緒にいること自体が苦痛になった

といった理由から、離婚を考える女性は少なくありません。

もっとも、熟年離婚は若い世代の離婚とは異なり、

  • 財産の問題が複雑
  • 生活基盤の再構築が難しい
  • 老後に直結する

という特徴があり、若い世代の離婚とは全く異なるリスクを伴います。

そのため、「もう限界だから離婚する」という判断だけで進めてしまうと、「離婚しなければよかった」と後に大きな不利益を受ける可能性があります。

本記事では、熟年離婚を検討する女性が押さえておくべきポイントを、実務の観点から詳しく解説します。

1 熟年離婚はできるのか

(1)夫が離婚に応じる場合

妻から離婚を切り出し、夫も同意する場合には、協議離婚(話し合いによる離婚)が成立します。

熟年夫婦の場合、

  • すでに関係が冷え切っている
  • お互い干渉しない生活が続いている
  • 子どもも独立している

といった事情から、夫も離婚に抵抗しないケースも一定数あります。

このような場合には、比較的スムーズに離婚が成立することもあります。

しかし一方で、

  • 夫が家庭内で支配的であった
  • 妻が長年我慢してきた

といった場合、夫は妻の不満に全く気付いておらず、離婚を切り出されて初めて事態を認識することも多いです。

その結果、

  • 「なぜ今さら離婚なのか」
  • 「離婚には絶対応じない」

と強く反発され、話し合いが進まないケースも少なくありません。

もっとも、このような場合でも、妻の離婚意思が明確であれば、家庭裁判所での調停を通じて、最終的に離婚に応じるケースも多く見られます。

(2)夫が離婚に応じない場合

夫がどうしても離婚に同意しない場合、裁判で離婚を認めてもらう必要があります。

そのためには、民法770条に定められた法定離婚事由が必要です。

法定離婚事由は以下のとおりです。

  • 不貞行為(不倫)
  • 悪意の遺棄(生活費を支払わないなど)
  • 3年以上の生死不明
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由(婚姻破綻)

熟年離婚では、明確な不倫や暴力がないケースも多いですが、それでも離婚が認められることは十分にあります。

例えば、

  • 長年にわたるモラハラ的言動
  • 無視や人格否定
  • 家庭内別居状態

といった事情が積み重なることで、「婚姻関係は既に破綻している」と評価されることがあります。

また、特に重要なのが別居期間です。

明確な離婚原因がない場合でも、

数年間の別居が継続している

という事情があれば、婚姻関係の破綻が認められ、離婚が認められる可能性が高まります。

なお、ここでいう「別居期間」は「家庭内別居」ではなく、別々の家に暮らしていることをいいます。

2 本当に離婚すべきか(最重要ポイント)

熟年離婚において最も重要なのは、離婚後の生活設計、特に経済面の見通しです。

例えば、

  • 結婚後に専業主婦になった
  • 再就職してもパート勤務にとどまっている

という場合、離婚後になかなか仕事に就くことができなかったり、職についたとしても、安定した収入を確保することは容易ではありません。

そのため、

  • 離婚時に財産分与を受けたとしても
  • 数年後に生活が苦しくなる

というケースは決して珍しくありません。

また、熟年離婚では老後資金の問題が直接関わってくるため、

  • 年金だけで生活できるのか
  • 医療費・介護費はどうするのか
  • 住居をどう確保するか。

といった点も慎重に検討する必要があります。

したがって、離婚を決断する前に、

  • 財産分与の見込み
  • 年金分割後の見込み年金額
  • 離婚後の収入可能性

を具体的にシュミレーションした上で、離婚の判断をする必要があります。

3 離婚か、まず別居か

「離婚したいが経済的に不安がある」という場合には、まず別居を選択するという方法も有効です。

婚姻関係が続いている限り、収入の多い配偶者には他方の配偶者に対し婚姻費用(生活費)を支払う義務があります。

そのため、

  • 別居しながら生活費を受け取る
  • その間に仕事を探す
  • 離婚に向けた準備を整える

という進め方が可能です。

別居にはもう一つ重要な意味があります。

離婚原因を作る(婚姻破綻の立証)

という点です。

一定期間の別居が継続すれば、それ自体が離婚を認める根拠になる可能性があります。

60代・70代の場合には、

  • 相続権の有無
  • 遺族年金の受給

といった観点から、あえて離婚しない方が良い場合もあります。その場合は、離婚はせず、別居を続ける場合もあります。

4 離婚を急いではいけない

熟年離婚で特に注意すべきなのは、

離婚だけを先に成立させてしまうこと

です。

例えば、

  • 「とにかく早く別れたい」
  • 「もう顔も見たくない」

という気持ちから、財産分与などを決めずに離婚届を提出してしまうと、

  • 後から交渉が困難になる
  • 相手が非協力的になる
  • 速やかな財産開示がされなくなる
  • 婚姻費用(生活費)の請求ができなくなる

といった問題が生じます。

離婚は一度成立すると元に戻すことはできません。

したがって、

財産分与・年金分割などの条件をすべて決めてから離婚する

ことが極めて重要です。

5 財産分与のポイント

熟年離婚では、婚姻期間が長いため、財産の種類や金額が多くなりがちです。

そのため、

別居前に財産情報をできる限り把握しておくこと

が非常に重要です。

具体的には、

  • 預貯金
  • 保険
  • 株式・投資信託
  • 不動産
  • 退職金

などを可能な限り確認しておく必要があります。

別居する前に、夫名義の財産についての情報を出来る限り、集めることは重要です。証拠集めについては、離婚に向けて証拠集めをしたいをご参照ください。

(1)退職金

退職金は、まだ受け取っていなくても、婚姻期間に対応する部分については財産分与の対象となります。

この点、夫からは、退職金が将来のことで、支払われるかも不透明なので、財産分与の対象ではないと主張されることがありますが、会社に退職金規定があれば、退職が何年先であっても、退職金は財産分与の対象になるとするのが現在の家庭裁判所の実務です。

ここで重要なのはタイミングです。

  • 退職前 → 見込み額で分与可能
  • 退職後 → 預金口座などに残っている金額のみ対象

退職後に資金が使われてしまうと、回収が難しくなるため、

退職前に手続きを進める方が有利な場合が多い

といえます。

(2)不動産

婚姻中に取得した不動産は、名義に関係なく共有財産です。

処理方法としては、

  • 一方が取得して代償金を支払う
  • 売却して利益を分ける

のいずれかになります。

熟年離婚では、

  • 住宅ローンが完済している
  • 子どもが独立している

といった事情から、売却して分けるケースも多く見られます。

なお、不動産購入時の頭金等に、例えば妻の実家からの援助金が使われた場合、その部分は、妻の特有財産で、妻に有利に計算されます。熟年離婚の場合は、妻の実家からの援助であることの証明が明確に残っていない場合もありますが、お金の流れを細かく説明する等で認められる場合もありますので、諦めずに主張することが大切です、

6 年金分割は必ず検討する

婚姻期間が長い場合、年金分割の有無によって、将来の生活に大きな差が生じます。

特に、

  • 夫が会社員・公務員
  • 妻が専業主婦または低収入

という場合には、年金分割は極めて重要です。

手続きをしないと、本来受け取れるはずの年金を失う可能性があります。

年金分割をするには、年金分割情報通知書を年金事務所でとる必要がありますが、50歳以上の場合は、その際に、年金分割した場合の受給年金の見込み額を知らせてもらえます。

年金分割については、年金分割について知りたいもご覧ください。

7 よくある失敗例

熟年離婚では、以下のような失敗が多く見られます。

  • 財産を把握しないまま離婚してしまう
  • 退職金の扱いを理解していない
  • 年金分割をしないまま離婚する
  • 感情的に離婚を急ぐ

これらはすべて、事前の知識と準備で回避できる問題です。

8 まとめ|熟年離婚は「準備」で結果が変わる

熟年離婚は、

  • 財産が多く複雑
  • 生活再建が難しい
  • 老後に直結する

という特徴があります。

そのため、十分な準備をせずに進めると、

  • 本来得られる財産を失う
  • 将来の生活が不安定になる

といった重大なリスクがあります。

☑熟年離婚を検討している場合は、早い段階で専門家に相談し、適切な準備を進めることが重要です。

By typeタイプ別で見る離婚

  • 専業主婦・パートの離婚
  • 共働き夫婦の離婚
  • 熟年離婚
  • スピード離婚
  • 長期別居後の離婚
  • 夫が公務員
  • 夫が医師
  • 国際離婚

この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

たかぎ法律事務所代表弁護士
2000(平成 12)年 10 月弁護士登録
第一東京弁護士会所属
登録番号 28118
修習期 53 期
東京都多摩市出身
上智大学法学部国際関係法学科卒
米国ノースウエスタン大学 LLM 卒

弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、現在は、女性側離婚案件に特化。年間 100 件以上の相談を受けております。特に高額で複雑な財産分与や婚姻費用について多数解決してきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。

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