【解決事例】婚姻届がなくても財産分与が認められた事例~家計の共有やLINEでの相談実態を立証し、住宅ローン返済分も財産分与の対象と認められたケース~

事案

依頼者である女性は、離婚後、子どもとともに男性との共同生活を開始しました。
その後、男性は住宅ローンを利用して自己名義で自宅を購入し、依頼者と子どもはその住宅で生活を送るようになりました。
共同生活の中では、男性が主として収入を得て住宅ローンや生活費を負担し、依頼者は家事や育児を中心に担いながら家庭を支えていました。依頼者が家庭を担うことで、男性は安心して仕事に専念できる環境が整えられ、家族として協力しながら生活を続けていました。
ところが、長年にわたる共同生活の後、男性は突然自宅を出て別居を開始しました。
依頼者は、共同生活を通じて形成された財産について財産分与を求めましたが、男性は、「婚姻届を提出する意思はなかった」「法律上の夫婦ではなく、内縁関係にも当たらない」「したがって財産分与は認められない」などと主張し、請求を争いました。

問題となったポイント

本件で最大の争点となったのは、「法律上の婚姻がない二人に、財産分与が認められるだけの内縁関係が存在したか」という点でした。
内縁関係であると認められれば、離婚した夫婦と同様に、共同生活の中で形成した財産について財産分与が認められる可能性があります。
一方で、相手方は婚姻意思がなかったことを強調し、「単なる同居にすぎない」と主張していました。
そのため、共同生活の実態を客観的な証拠によって丁寧に立証することが重要となりました。

当事務所の対応

当事務所では、「婚姻意思があったか」という抽象的な議論ではなく、実際に二人がどのような生活を送っていたのかという生活実態を証拠に基づいて明らかにすることを重視しました。
まず、依頼者から事情を聞き取り、共同生活の経過や家計管理の方法、役割分担などを時系列で整理しました。
特に力を入れたのは、「家計を共同で運営していた」という事実の立証です。
共同生活では、収入や支出の状況について日常的に情報を共有し、生活費だけでなく、家具や家電など高額な買い物をする際にも、お互いに相談しながら決めていました。
その実態を示すため、生活費や購入予定の商品について相談しているLINEのやり取り、高額な支出について意見を交わしているメッセージ、家庭内の役割分担が分かる資料などを証拠として提出しました。
また、住宅についても、名義は男性一人でしたが、住宅ローンを返済しながら家族全員で居住し、その住宅を生活の本拠としていたこと、依頼者が家事・育児を担うことで男性が継続的に収入を得られ、その結果として住宅ローンの返済が可能になっていたことも具体的に主張しました。
さらに、家計管理だけではなく、

  • 子どもの養育を共同で行っていたこと
  • 家庭内で役割分担が確立されていたこと
  • 長期間にわたり家族として生活していたこと
  • 日常生活における重要事項を互いに相談して決めていたこと

など、夫婦と変わらない共同生活の実態を一つひとつ証拠によって裏付けました。

裁判所の判断

裁判所は、男性が主張する「婚姻意思がなかった」という点だけを重視することはありませんでした。
むしろ、

  • 長期間にわたり共同生活を送っていたこと
  • 家計を一体として管理していたこと
  • 収入や支出の情報を共有していたこと
  • 高額な買い物など生活上の重要事項について相談しながら決定していたこと
  • 家事・育児を分担し、お互いに協力して家庭生活を営んでいたこと
  • 共同生活を通じて財産形成が行われていたこと

といった客観的な事情を総合的に評価しました。
そして、本件は単なる同居ではなく、実質的には夫婦と変わらない共同生活であり、財産形成も共同で行われていたとして、財産分与を認めました。
また、不動産については男性単独名義で購入されたものであったものの、同居期間中に返済された住宅ローン部分については、共同生活の中で形成された財産に当たるとして、財産分与の対象となることが認められました。

解決のポイント

本件では、「婚姻届を提出していない」という形式ではなく、「実際にどのような生活を送っていたか」が重視されました。
特に、家計の情報を共有していたことや、高額な買い物について相談していたLINEのやり取りを提出したことにより、家計が一体として管理されていた実態を具体的に裁判所へ示すことができました。
内縁関係や事実婚では、「生活を共にしていた」という抽象的な主張だけでは十分ではありません。
日々のメッセージ、家計に関する相談、生活費の負担状況、住宅ローンの返済状況、家事・育児の分担など、共同生活を裏付ける客観的な証拠を積み重ねることが、結果を左右する重要なポイントとなります。
本件では、そうした証拠を丁寧に整理・提出したことで、共同生活の実態が認められ、依頼者に有利な財産分与を実現することができました。

よくある質問(Q&A)

Q1. 婚姻届を提出していなくても財産分与は認められますか?

はい。婚姻届を提出していなくても、夫婦と同様の共同生活を営んでいた実態が認められれば、内縁関係として財産分与が認められる場合があります。

Q2. 内縁関係かどうかは何で判断されますか?

裁判所は、同居期間だけでなく、家計管理の方法、生活費の負担、家事・育児の分担、周囲から夫婦として認識されていたかなど、さまざまな事情を総合的に判断します。

Q3. LINEのやり取りも証拠になりますか?

はい。生活費の相談、家計の共有、高額な買い物についての相談、住宅ローンや子どもの教育費について話し合っているLINEやメールは、共同生活や家計共有の実態を示す有力な証拠となることがあります。

Q4. 相手名義の家でも財産分与の対象になりますか?

はい。名義だけで決まるわけではありません。共同生活の中で住宅ローンが返済され、財産形成に双方が貢献していたと認められれば、返済済みのローン相当額などについて財産分与が認められる可能性があります。

Q5. 専業主婦(主夫)のように家事や育児を担当していただけでも財産分与は受けられますか?

はい。家事・育児を担うことは、相手が継続して収入を得て財産を形成するための重要な貢献です。そのため、収入がなかったとしても、共同生活への貢献が認められれば財産分与の対象となる可能性があります。

この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

たかぎ法律事務所代表弁護士
2000(平成 12)年 10 月弁護士登録
第一東京弁護士会所属
登録番号 28118
修習期 53 期
東京都多摩市出身
上智大学法学部国際関係法学科卒
米国ノースウエスタン大学 LLM 卒

弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、現在は、女性側離婚案件に特化。年間 100 件以上の相談を受けております。特に高額で複雑な財産分与や婚姻費用について多数解決してきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。

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