離婚したくない

夫から離婚を切り出されたとき、前兆があっても無くてもびっくりして焦ってしまい、どうすれば良いのか不安になりますね。とっさに、感情的なことを言ってしまうこともあるでしょう。しかし、初動からどのように対応したかによって、後の手続きや夫の行動に影響を与えることが多いです。ここは一旦冷静になって、これからどうすべきか考えましょう。

1 相手が離婚したい理由はなにか。

まず、夫がなぜ離婚したいと言っているのか、考えてみましょう。

(1)不貞している

夫から離婚を求めてくる場合、夫に別の女性がいる、つまり不貞をしていることが非常に多いです。これは、長年夫婦の仲が良くなく、家庭内別居状態だった場合だけでなく、特に夫婦の仲は悪くなく普通に家庭生活を送っていた場合でもあてはまります。

(2)妻に何らかの不満を持っている

不貞の隠れ蓑である場合も多いのですが、妻の夫に対する言動や、お金の使い方、夫婦生活、家事育児について妻に不満を抱いていることもあります。

2 自分が離婚したくない理由は何か。

次に自分が離婚したくない理由を考えてみましょう。

(1)夫への愛情がある

離婚したくない理由が、まだ夫のことが好きだからということがあります。夫に対する愛情があり、今も夫と一生添い遂げたいと思っていて、離婚したくないと考えることもあります。

(2)子のため

夫との関係は冷え切っているが、子をシングル家庭にしたくないという気持ちから離婚したくないと考えることもあります。

(3)経済的な理由

夫とは不仲ではあるが、主婦やパート勤務で収入が少ないため、離婚しても経済的に生活していくことが難しいので、離婚したくないと考えることもあります。

3 気を付けなければいけないこと

(1)逆切れ、責める

夫からいきなり離婚を切り出されると、驚きと不安から、思わず感情的になり、夫を責めたり、攻撃的な態度をとってしまうことがあります。このような感情的な態度をとることは止めた方が良いです。

夫が妻に離婚を請求している時点で、既に妻への気持ちは薄くなっていることが多いですが、妻が感情的な対応をすることでますます、妻への気持ちがなくなり、離れていってしまいます。妻に夫への愛情があり、やり直したいと思っている場合は、なおさら、冷静に対応する必要があります。 

(2)すがる

かといって、必要以上に下手に出たり、泣いてすがるような態度をとることも止めましょう。夫が妻に不満に思っていることが何かあり、妻もその自覚があり、その点を夫に謝る程度なら良いですが、それを超えて、しがみつくような態度は夫の気持ちをかえって遠ざけます。

(3)証拠を見せる

例えば、夫が不貞をしていて、妻が調査会社に依頼して、既に不貞の証拠を確保していることがあります。その場合、夫に証拠を突き付け、「あなたは有責配偶者だから、あなたからは離婚できないよ」と言えば、夫が離婚を諦めて又は怖がって元に戻ってくれるのではないかと考えてしまうことがあります。しかし、これも逆効果です。これをきっかけに、夫が家を出て別居が始まることがあります。 

(4)別居する

夫から離婚を求められて、少し離れて冷静になれば、また戻れるのではないかと考え、一時的のつもりで妻が家を出て別居を始めることがあります。このように妻から別居を始めてしまうことも止めた方が良いです。

一旦別居を始めて、後で再度同居してよりが戻ったというケースは、非常に稀です。多くの場合は、そのまま別居を継続して、最終的には離婚に至っています。ですので、妻から別居を開始すれば、わざわざ妻が離婚の時期を早めてしまうことになります。

4 やるべきこと

(1)弁護士に相談

夫が離婚を求めてきたら、夫に何か言ったり、何か行動する前に、兎にも角にも弁護士に相談してください。弁護士に相談しながら、自分はどうしたいのかを整理し、そのために、今、そして今後、自分が何をすれば良いのか確認し、行動する必要があります。

(2)カウンセリングを受けてみる

夫との関係修復を希望する場合は、夫婦カウンセリングを受けてみても良いでしょう。

夫婦2人で受けることが出来ればより良いですが、自分だけカウンセリングを受けたとしても、相手への接し方や、今までの自分の言動を相手はどうとらえていたか、相手の言動の真意など、様々なことに気づくことができ、関係改善に向けての行動に役立つかもしれません。

(3)関係修復を試み

自分のできる範囲で修復のための試みをしてみましょう。ただ、無理は禁物です。無理して夫の要求を受け入れるなどしていると精神的に辛くなります。

修復のための試みは、例えば、ラインでの声掛け、働きかけなど、なるべく記録が残る形で行いましょう。

(4)不貞相手への請求はどうする?

夫は不貞しているけれど、夫には女性と別れて、妻とよりを戻してもらいたい場合、不貞相手へ慰謝料請求をするか否かは時期などを含め慎重に判断した方が良いです。なぜなら、仮に、妻が不貞相手に慰謝料請求をすると、場合によっては、夫と不貞相手の関係がより一層強固なものになり、妻VS不貞相手と夫という関係になってしまう危険があるからです。

夫との修復を希望する場合は、不貞相手への慰謝料請求は、消滅時効の時期(不貞が分かってから3年)に気を付けつつ、すぐに慰謝料請求するのではなく、もはや夫婦の関係が改善することがない状況になってからにすべき場合もあります。

5 離婚したくない場合の対応

(1)協議

夫は、妻と離婚したいとなると、妻に対する不満をあることないこと列挙して、離婚を求めてくることがあります。それについて腹立たしくなり、それに1つ1つ反論したり、「そう言っているあなたはこうでしょ」と、今度は、妻が夫の不満を並べて反撃したくなりますが、それはぐっと堪えましょう。「自分の改善できる部分は改善して、やり直したい」といい、離婚を拒否する態度をとることが大切です。

(2)調停

基本的には協議での姿勢と同じです。しかし、もし、夫が弁護士を代理人につけ、調停を申し立ててきている場合、夫の離婚意思はかなり固く、夫婦関係の修復自体は難しい可能性があります。その場合、夫から離婚請求されているその段階で、離婚に向けて話を進める方が、離婚の条件がより妻に有利な形になる可能性があります。改めて、自分の離婚したくない理由を整理し、自分と子どもが幸せな人生、より安定した生活を送るには何か良いのか考えてみる必要があります。

(3)裁判

裁判まで来てしまうと、夫婦関係を修復して元に戻ることはかなり困難です。この場合は、夫婦関係の修復を目指すより、なるべく離婚は先延ばしにして、その間に離婚後の生活に向けての準備をした方が良いかもしれません。

この場合も、夫からの離婚請求の場合は、裁判になった後でも、離婚阻止を目指すより、離婚に応じる方がより、良い離婚条件で解決できることが多いです。この点は、夫の収入や婚姻中の財産がどのくらいか、夫が不貞しているなどの有責配偶者かなどによって、離婚に応じた方が良いのか、離婚に応じないで、なるべく離婚を先のばしにした方が良いのか違ってきます。弁護士と相談しながらより良い方法で進めましょう。

6 将来に向けての準備は大切

さまざまな対策を練り、寄りが戻ったばあいでも、将来また関係が悪化する場合もありますし、離婚を阻止できた場合も別居が継続していれば、最終的には離婚になることが多いです。そのため、一度離婚の話が出てきたときは、将来的には離婚になるかもしれないということを心に留め、仕事を始めるなど、特に経済的な部分の準備をしておくことが安心です。

この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

2000年10月 弁護士登録(第一東京弁護士会所属:53期)。
弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、年間100件以上の相談を受けてきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。
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