【解決事例】年収3000万円の夫から生活費ゼロ…婚姻費用月40万円を獲得し、離婚請求にも応じず生活を守ったケース

1 事案の概要

本件は、会社経営者である夫(年収3000万円以上)から生活費の支払いがない状態で別居していた妻が、婚姻費用の支払いを求め、調停により月額約40万円を獲得した事案です。
依頼者である60代女性は、夫と不仲ではないものの別居状態にあり、夫名義のマンションに居住していました。
また、夫の会社で経理を担当しており、給与の支払いは受けていましたが、夫婦としての生活費は支払われていませんでした。
その後、夫の不貞が発覚したことを契機に、依頼者は夫の収入に見合った適正な婚姻費用の支払いを求めるに至りました。

2 ご相談時の状況

依頼者:60代女性(夫の会社で経理担当・給与あり)
夫:会社経営者(年収3000万円以上・収入変動あり)
居住状況:別居(夫名義マンションに妻が居住)
生活費:夫からの支払いなし
その他:夫から離婚請求あり

3 主な争点と法的ポイント

(1)高収入者の婚姻費用の算定

夫は、

  • 「収入は毎年変動する」
  • 「今年は悪く、来年はさらに減る可能性がある」

などとして高額な婚姻費用を否定しました。
しかし、婚姻費用は、最近の収入を基準に算定されるため、将来の不確定な事情のみで減額することはできません。

本件では、

  • 標準算定方式をベースに
  • 高所得者における貯蓄率を考慮した基礎収入割合

を用いて、実態に即した金額を主張しました。

(2)「生活費はそんなにかからない」という主張

夫は「生活費は多額にならないはず」と主張しましたが、

  • 婚姻費用は最低生活費ではなく、収入に見合った生活水準の維持が基準

です。
したがって、このような抽象的・主観的主張は採用されません。

(3)夫名義マンションに居住している場合の扱い

本件では、妻は夫がローンを支払うマンションに居住していました。
この点について実務上は、標準算定方式で算出した金額から住居関連費を控除することが多いです。この住居関連費は、例えば夫が支払っているローン額ではなく、妻の収入に応じた住居費用が控除されます。

☑ 住居の提供がある場合、住居関連費として、婚姻費用額から控除されます。

(4)給与と婚姻費用の関係

妻は夫の会社から給与を得ていましたが、

  • 給与=労務の対価
  • 婚姻費用=扶養義務

であり、法的性質が異なります。

☑給与があることを理由に婚姻費用を否定することはできません。

(5)離婚請求への対応

夫からは離婚請求がされていました。
依頼者は当初、不貞に対する感情から離婚も考えていましたが、

  • 離婚に応じると夫の思惑どおりになること
  • 離婚すると婚姻費用が終了すること
  • 老後の生活基盤への影響

を踏まえ、

☑ 離婚せず婚姻費用の支払いを受けながら別居生活を続けること

を選択しました。

4 解決結果

調停では双方の主張が対立し平行線となりましたが、最終的に調停委員会は

☑ 妻側の主張に沿った月額約40万円の婚姻費用案

を提示。
夫もこれを受け入れ、調停成立となりました。

5 本件の実務的ポイント

  • 高収入者でも適切な算定により高額婚姻費用が認められる
  • 収入変動や主観的生活費論は通りにくい
  • 夫名義の住居に住んでいても婚姻費用請求は可能
  • 給与の支払いと婚姻費用は別問題
  • 離婚しないこと自体が有効な戦略となる

6 弁護士からのコメント

本件のように、

  • 高収入なのに生活費が支払われていない
  • 別居しているが離婚するか迷っている
  • 相手から離婚を迫られている

というケースでは、

☑ 「離婚するかどうか」と「生活を守ること」は分けて考える必要があります。
☑ 婚姻費用は請求時から発生するため、対応の早さが極めて重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1 夫名義のマンションに住んでいる場合、婚姻費用はもらえないのですか?

いいえ、もらえます。
住居の提供は一定の考慮要素にはなりますが、それだけで生活費全体が賄われているとは評価されません。したがって、別途婚姻費用の請求は可能です。

Q2 夫から給与をもらっている場合でも婚姻費用は請求できますか?

はい、可能です。
給与は労働の対価であり、婚姻費用とは別の制度です。給与が支払われていても、生活費が不足している場合には婚姻費用請求が認められます。

Q3 夫が「収入が減る」と言っている場合、婚姻費用は下がりますか?

原則として、現在の収入を基準に判断されます。
将来の予測や一時的な減少のみでは、大きな減額は認められにくいです。

Q4 高収入の場合、算定表は使えないのですか?

そのままは使えないことが多いですが、標準算定方式をベースに修正して用いるのが一般的です。

Q5 別居していても仲が悪くなければ婚姻費用は請求できませんか?

そのようなことはありません。
婚姻費用は夫婦の扶養義務に基づくものであり、関係の良し悪しとは直接関係ありません。

Q6 夫から離婚を求められている場合、応じないと不利ですか?

必ずしも不利ではありません。

  • 特に本件のように、
  • 不貞がある
  • 経済格差が大きい

場合には、離婚に応じないことが合理的な選択となることも多いです。

Q7 婚姻費用はいつから発生しますか?

原則として、請求した時点(調停申立時など)から発生します。
そのため、早期の対応が非常に重要です。

この記事を書いた人

弁護士髙木由美子

たかぎ法律事務所代表弁護士
2000(平成 12)年 10 月弁護士登録
第一東京弁護士会所属
登録番号 28118
修習期 53 期
東京都多摩市出身
上智大学法学部国際関係法学科卒
米国ノースウエスタン大学 LLM 卒

弁護士登録以降、離婚・国際離婚などの家事事件を中心に扱い、現在は、女性側離婚案件に特化。年間 100 件以上の相談を受けております。特に高額で複雑な財産分与や婚姻費用について多数解決してきました。ご依頼者がベストな解決にたどり着けるためのサポートをすることは当然として、その過程でもご依頼者が安心して進めることが出来るように心がけています。

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